「鉄道ニュース&コメント」でもお知らせしたとおり、JRグループなどは2008年3月15日にダイヤ改正を行います。
今回の改正は久々に全国レベルで大きな動きのある改正で、中には鉄道ファンにとって衝撃の内容も含まれています。
各社から発表になった改正内容を列挙しつつ、その特徴と私の検証を述べていきます。
◆JR旅客各社・長距離列車
年々その数を減らしている寝台列車ですが、今回は寝台特急「なは」(京都〜熊本:JR九州の24系使用)、同「あかつき」
(JR西日本の14系使用)、寝台急行「銀河」(JR西日本の24系使用)が廃止されることになりました。
また、2往復設定されていた寝台特急「日本海」は2・3号が、「北斗星」は1・4号がなくなり、1往復となります。このため、
号数のつく寝台特急列車は、定期では1本もなくなるという事態が発生するに至ってしまいました。
これは非常に残念で、個人的にはやってほしくない内容だったのですが、使用されている14・24系客車及び牽引を担当
する機関車(EF65・EF66・ED76・EF81形)の平均経年が30年を超えていることや、航空機の熾烈な旅客獲得競争が
繰り広げられている現状を考えると、致し方ないと言わざるを得ないのかも知れません。航空機利用の方が少しでも鉄道に
シフトしてくれたところで、新幹線利用になっちゃうだろうし・・・。悲しい現実ですね。
◆JR北海道
札幌都市圏の増発が主で、特急「スーパーカムイ」や快速「エアポート」の増発、札沼線の土休日ダイヤにおける5連列車
の増発が行われる一方、寝台特急「北斗星」では1号の函館→札幌間で認められていた立席利用が廃止されます。
また北海道新幹線の建設工事に伴う青函トンネル集中工事時間設定に伴い、0時ごろから3時ごろまで津軽海峡線では
列車の設定が通常レベルではできなくなるため、下り寝台特急「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」の青森→函館間
(後者は青森信号所→五稜郭間)の運転時刻が繰り下げられます。繰り下げ時刻は現行の「北斗星1号」「北斗星81号」を
ベースにした新しいスジとなっています。
なお青函トンネルの工事には、2月下旬に登場したチ・チラ50000形貨車が使用される予定です。
◆JR東日本
新幹線部門では、仙台発東京行き「はやて100号」の新設や、定期列車の拡大が行われます。またデジタルATCの本格供用
により、盛岡発着の「やまびこ」で所要時間が5分前後短くなります。
在来線では主に首都圏の輸送改善が行われます。横須賀線では、品川駅に15番線を新設し、2面3線として総武本線からの
品川折り返し列車を新設する他、品川始発の「成田エクスプレス」を設定します。中央本線では一部の「スーパーあずさ」が立川
に停車し、日中の「あずさ」「スーパーあずさ」は交互発着となります。また快速電車は検査時などを除きE233系での運転に統一
され、青梅線・八高線方面への分割運用が増発となります。平日夕方の増発分は「箱根ヶ崎」行きになります。
青梅・五日市線では半自動ドア扱いも始まります。
これ以外にも、ラッシュ時を中心に各線区で増発が行われ、特に京葉線は朝ラッシュ時に2本増となります。京浜東北線では
E233系が12本投入され、混雑率の緩和に貢献します。また武蔵野線では新駅「越谷レイクタウン」駅が開業し、全列車が停車
します。
一方東北方面では、秋田車両センター所属のキハ58系で運転されてきた秋田からの花輪線直通快速が廃止され、東北の
キハ58系も一気に縮小しました。なお快速のスジは残りますが701系とキハ110系の運用となり、大館乗換えとなります。
また仙台地区で細々と残っていた455系の運用もE721系に置き換えられました。
いわゆる「ライナー」列車は、「中央ライナー」で183系使用列車がE351系に置き換えられて座席数を増やす一方、東海道・
東北方面の各列車は削減がなされます。特に土休日の運転をやめたものが多いので、利用する際は注意が必要です。
東海道本線ではE257系の運用が消滅し、185系と215系でまかなわれるようになりました。
車両面では、この改正を機に一部のEF65形・EF81形・24系(「夢空間」含む)・209系・201系が運用を離脱。E655系「和(なご
み)」の本格稼動もあいまって、14系「ゆとり」とEF58形が引退しました。一方でE217系更新車やE233系3000番台がお目見え
しています。中央総武緩行線では一部のE231系で自動放送が始まります。小海線では、土休日中心だったキハE200形の
運用が毎日設定となります。
◆JR東海
今回は新幹線中心のダイヤ改正となります。新幹線ではN700系を使用した東京〜博多間の「のぞみ」を毎時1本設定するほか、
全列車が品川・新横浜に停車するようになり、わかりやすく利用しやすいダイヤになります。また、初めて新横浜始発の「ひかり
393号」(N700系)が運転されることになりました。
車両面では、臨時「のぞみ」の運用の大半が700系となり、300系は初期車で完全撤退が予定されています。
在来線では、東海道本線・中央本線で快速中心の増発を実施。特急は「しなの」「伊那路」で時刻修正が行われるほか、「ひだ」
が1往復増発されます。
◆JR西日本
新幹線は東海道新幹線と同様、N700系の拡大が主な内容です。広島地区では、これまで岡山折り返しだった日中の「のぞみ」
を広島まで延長し、1時間当たり3本として利便性を高めます。一方、500系は5本が8連化されて0系の置き換えに充てられる
ことになったため、「のぞみ」運用に入る機会が減り、伝統の「のぞみ500・501号」も消滅します。
在来線ではいよいよ「おおさか東線」が開業。放出〜久宝寺間で、車両は奈良電車区の103・201系を使用。ラッシュ時のみ宮原
総合運転所の223系が「直通快速」で乗り入れます。これに伴い、JR難波発着の区間快速は快速に名称変更します。
大阪都市圏ではこのほか、山陽本線須磨〜西明石間で増発が行われます。阪和線では「直通快速」の新設、関空・紀州路快速
の4+4連化と103系快速の置き換えが行われます。この関係で日根野電車区の223系は組み換えが行われます。
直通快速の新設で223系が天王寺駅大阪環状線ホームに入線するようになる一方で、JR難波発着は消滅します。
このほか特急は新幹線との接続改善などを目的に「やくも」「スーパーはくと」などで時刻修正や停車駅変更があります。
駅では、新たに「島本」「須磨海浜公園」「はりま勝原」「和木」「梶栗郷台地」「西川原」駅が開業。臨時駅「婦中鵜坂」も開設です。
また、湖西線の西大津駅が大津京駅に、雄琴駅がおごと温泉駅に名称変更となります。
◆JR四国
本州との関係では、「マリンライナー」を中心に新幹線との接続が改善されます。
特急列車は予讃線・土讃線系統ともに停車駅が増えるほか、時刻修正が行われます。徳島〜阿南間では現行「むろと」を継ぐ形
で通勤特急「ホームエクスプレス阿南」が登場し、2往復運転されます(キハ185系)。なお特急は全列車禁煙になります。
普通列車は、特急「南風」に接続する快速が「サンポート南風リレー」、普通が「南風リレー」という愛称になります。土讃線では
「小村神社前」駅が開業する他、高知駅の高架化が竣工します。一方で、キハ28・58・65形はいずれも予備車になります。
勢力の拡大が続く1000形は、阿南〜桑野間に初入線します。
◆JR九州
特急列車は、新幹線との接続改善や通勤時間帯の運行拡大が行われます。特に「有明」は吉塚始終着列車が初めてできる
ほか、一部列車で増結が行われます。「きらめき」「かもめ」「ソニック」では増発や運転区間延長が行われます。
普通列車系は博多地区の夜間の快速増発、大分・小倉地区の終電延長、熊本〜鹿児島中央間(肥薩おれんじ鉄道経由、
運行は肥薩おれんじ鉄道)の快速の新設や、「なのはなDX」などの時刻修正が行われます。
駅関係では、「歓遊舎ひこさん」駅が開業。筑前新宮駅は「福工大前」駅に変更されます。
◆JR貨物
翌日配達区域の拡大を目的に各路線で所要時間が短縮されます。幹線系ではコキ106形の導入が一層進む予定です。
また今回の目玉は、北海道地区へのタキ1000形の導入です。DF200形牽引で本輪西→札幌(貨物)間に1本、高速石油輸送
列車が設定され、42分も所要時間が短縮されます。
なお機関車の置き換えにより、塩尻機関区からEF64形が完全に撤退する他、EF65形などにも廃車が出る見込みです。
仙台総合鉄道部のED75形も運用が減り、日中の黒磯入線は1往復のみに、また奥羽本線運用はEH500形及びEF510形に
置き換えられます。
◆小田急電鉄・東京メトロ・箱根登山鉄道・東葉高速鉄道
今回の目玉は「MSEの地下鉄乗り入れ」。小田急の最新ロマンスカー・MSEこと60000形を使用した特急「メトロさがみ」「メトロ
ホームウェイ」「メトロはこね」は千代田線の北千住または大手町発着。また季節列車「ベイリゾート」は有楽町線の新木場発着で
運転されます。地下鉄の有料特急はこれが初めての設定ということで、注目が集まっています。
小田急ではこの他、線内で増発や分割・併合運用の削減を実施。江ノ島線の普通列車はすべて6連での運転になります。
小田急〜箱根登山の関係では、小田原〜箱根湯本間の普通列車の系統分割が実施され、同区間は小田急車4連のシャトル
運用となり、新宿方面からの直通運転は廃止されます。なおシャトル列車はかつて箱根登山鉄道の車両が出入りしていた
ホームを改造した11番線に発着します。
また東京メトロは東西線でダイヤを改正。西船橋口の輸送改善のため、増発や快速の通勤快速へのシフトが行われます。
東京メトロ〜東葉高速鉄道の関係では、ラッシュ時中心に増発が行われます。
◆東武鉄道・野岩鉄道・会津鉄道
JR直通特急「日光1号」の運転時刻変更を受けて、東武では連絡する普通列車を下今市→鬼怒川公園間で6050系により運転
します。野岩鉄道では、会津鉄道が運行を担当する快速「AIZUマウントエクスプレス」「AIZU尾瀬エクスプレス」の停車駅に、
龍王峡・川治温泉・中三依温泉を追加し、温泉街での利用拡大を図ります。なお会津鉄道線内の時刻変更はありません。
◆その他の鉄道
JRとの接続改善などを目的に、三陸鉄道・IGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道・秋田内陸縦貫鉄道・仙台空港鉄道・阿武隈急行・
関東鉄道・千葉都市モノレール・東京臨海高速鉄道・富士急行・しなの鉄道・上田電鉄・松本電気鉄道・北越急行・
天竜浜名湖鉄道・愛知環状鉄道・名古屋鉄道・長良川鉄道・伊勢鉄道・万葉線・のと鉄道・近江鉄道・信楽高原鉄道・北近畿
タンゴ鉄道・井原鉄道・広島高速交通・錦川鉄道・阿佐海岸鉄道・土佐くろしお鉄道・筑豊電気鉄道・平成筑豊鉄道・
甘木鉄道・肥薩おれんじ鉄道でダイヤ改正が実施されます。
IGRいわて銀河鉄道では始発列車が繰り上がります。愛知環状鉄道では新豊田〜三河豊田間のシャトル列車の設定がなされ、
近江鉄道では新駅「スクリーン」が開業します。北近畿タンゴ鉄道では特急「タンゴディスカバリー」が宮福線経由に変更されます。
筑豊電気鉄道では利用者減により減便が行われます。
◆ソフト面
JR東日本の「モバイルSuica」ですが、この改正から特急券機能が加わり、新幹線に乗車できるようになります。一般の「Suica」
も、利用範囲の拡大(例えば日光線や常磐線日立〜高萩間)が行われます。
首都圏でおなじみ「PASMO」も、「Suica」の拡大に合わせて利用範囲が拡大される他、京成などの一部会社で電子マネーの
利用が始まります。一方で前身「パスネット」が自動改札機での利用を終了し、役目を終えていきます。
また首都圏では、定期券の「1枚で購入できる範囲」が拡大します。
さらに、29日には「Suica」「TOICA」「ICOCA」のJR本州3社のICカードの相互利用が始まり、「Suica」の利用可能エリアは大きく
拡大します。
◆検証
JR全社が一斉に改正し、それに伴って各地の鉄道も改正する・・・これだけ大規模な改正は久々ではないでしょうか。
今年度はJR発足20周年という記念すべき年だったのですが、その最後を締めくくる改正は、「脱国鉄」を意識させられるような
内容でした。ブルートレインに代表される旧来のものが消えていき、一方で21世紀のJRを代表する車両群が勢力を拡大・・・。
改正内容にはいいものもあれば悪いと個人的に思うものもありました。この改正を境に、鉄道の世界がどう変貌していくか、
見守っていきたいと思います。
このコーナーは以上です。